不倫の慰謝料請求をする側の方が、慰謝料請求の相手方の職場などに「その人は不倫をしている」などと言いつけることがあります。
たとえば、
XとAの夫婦で、Aと不倫関係にあるYの存在をXさんが知って、
Xさんが、Yさんの職場の人や仕事の関係者、あるいはYの家族や友人などに、Yが不倫していると告げた、
という場合です。
Xさんが、Yさんだと分かる内容で、ネットの掲示板やSNSに投稿する場合もあります。
不倫をしているという事実は、Yさんの社会的な評価を下げる事実ですから、
XさんがYさんの不倫を職場の人等に告知した行為は、Yさんの名誉を侵害する行為といえます。
名誉(社会的な信用)を害する行為は、Yさんに対する不法行為となり得ます。
Xさんの配偶者のAさんとYさんが不倫しているからといって、
XさんのYさんに対する名誉毀損の不法行為を正当化しません。
Aさんとの不倫と、Yさんに対する名誉毀損は別の話です。
Xさんにについて上記のような不法行為が成立するとすると、
Xさんは、Yさんに対して、名誉毀損による慰謝料の支払う責任や、
名誉毀損によって生じたYさんの社会的評価の低下についての損害賠償の責任が生じます。
民事上の責任とは別に、刑事事件として、
Xさんの行為の態様によっては、公然と不倫の事実を示したものとして、名誉毀損罪の犯罪が成立が問題になります。
刑法(名誉毀損)第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。2(略)
また、上記のXさんの行為については、告知の内容や、告知の態様によっては、
名誉毀損罪の他に、侮辱罪(刑法232条)や業務妨害罪(刑法233条)も問題になります。
配偶者の不倫を知った上記Xさんのような立場にある方は、どれだけ腹が立ったとしても、
他人に不倫のことを言いふらすといった行為は法的にリスクのある行為ですから、
そういうことをする前に、慰謝料請求の事案を受けている弁護士に相談すべきでしょう。
他方で、不倫相手の配偶者から、不倫の事実を他者に言いふらされているとか、会社に告げる等と脅されているというような方は、
早々に弁護士に相談して、そういう相手方に対して警告してもらうべきです。
ネットで不倫の事実を書き込むのも名誉毀損に該当し得ます。
匿名でのネットの投稿がバレないとは限りません。
不倫に限った話ではありませんけど、他人の悪評をネットに投稿するのは控えた方が無難です。
一般人が他者の不倫の話を言ったら名誉毀損になり得るなら、
メディアが有名人の不倫を不特定多数に公開しているのは違法ではないのかということについては、
いずれまた解説したいと思います。