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コラム

名誉毀損の損害賠償請求、名誉回復措置請求

不倫した配偶者の職場や知人に不倫の事実を知らせる、不倫相手の職場や知人に不倫の事実を知らせる、SNSなどインターネットで誰のことか分かる内容で不倫の事実を公表する、といったことがなされた場合、不倫の事実を知らせたり公表したりした人は、名誉毀損などを理由に損害賠償責任を負う可能性があります。
損害賠償等の問題は、民事事件の問題です。(刑事事件の名誉毀損罪についてはこちら。)

最近の裁判例として、原告が、原告の元妻である被告が原告の不貞行為や原告と被告の離婚の条件等について記載した電子メールを原告の勤務先の役員及び従業員全員が閲覧可能なメールアドレス宛てに送信し、これにより原告の社会的評価が低下させられるとともに原告のプライバシーが侵害されたと主張して、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料及び弁護士費用の合計330万円と謝罪文の交付を求めた事案で、名誉権とプライバシーの侵害が認められ、慰謝料60万円と弁護士費用相当の損害6万円の計66万円が認められたものがあります(東京地方裁判所令和2年11月27日判決)。名誉回復措置として謝罪文の交付は認められませんでした。

 

不倫の事実を暴露するような行為は、名誉毀損とともにプライバシー侵害の問題も生じ得ます。今回は、名誉毀損について整理します。

以下の説明は、不倫の事実の名誉毀損に限らないので、その他の名誉毀損についてもご参考にしてください。

 

名誉毀損の損害賠償

 

名誉毀損とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価を低下させる行為のことをいいます。名誉というのは、社会からの客観的な評価のことですので、本人の自尊心(名誉感情)の侵害は名誉毀損にはなりません。本人の自尊心を傷つける行為は、侮辱の問題となります。
不倫したという事実は社会から受ける評価を下げる行為といえます。

民事事件としての名誉毀損は、意見・論評の表明による場合も含むので、事実の摘示による場合に限られる刑事事件の名誉毀損罪の場合より広い場合に問題になります。

事実の摘示の場合と意見論評の場合の違いは、証拠等で存否を認定できる事柄が「事実」とされ、証明になじまない批評などが意見論評の表明とされています。

不倫の場合は、不倫したという事実を流したことによる名誉毀損になる場合が多いと考えます。不倫の事実に関連して、価値・善悪などの批評をしたことについても名誉毀損の損害賠償の問題になることも考えられます。

 

名誉毀損は、表現した事実が真実かどうかに関わらず成立します。
不倫の事実が真実だからといって、不倫の事実を他人に伝えて良いということにはなりません。

 

名誉毀損の表現を特定少数の人に限った状況でした場合でも、さらに他人に伝わる可能性があるのであれば、名誉毀損の損害賠償責任を負います。
特定少数の職場の人に不倫の事実を広めた場合では、職場の人がさらに他人に広める可能性がありますから、名誉毀損となるものと考えられます。

 

名誉毀損の損害は、精神的苦痛が主となると考えられています。
名誉毀損による社会的評価の低下で財産的な損害が生じたのであれば、その低下を主張立証して賠償請求することもあり得ます。

精神的苦痛の慰謝料としては、メディアで公表されたというような場合でもなければ、裁判では100万円より低い金額になる傾向があると言われています。

名誉毀損の賠償請求をするのであれば、弁護士費用などで赤字になる可能性も踏まえた上で、さらなる名誉毀損をさせない等の金銭以外の意義も考慮して判断する必要があります。

 

事実の摘示の名誉毀損の場合、公共の利害に関する事実についてのもので主に公益を図る目的でされた場合で、公表された事実の重要な部分が真実であると証明されれば違法性がないものとされ、真実の証明ができなくても真実であると信じたことに相当の理由があれば故意過失がないとされて、名誉毀損の責任を負わないということになります。
不倫の場合は、公共の利害に関する事実にあたるとか公益目的があるという場合はかなり限られると考えます。

意見論評の公表の場合でも、公共の利害に関する事実に関するもので、主に公益目的の場合で、意見論評の域を逸脱していないものは、意見論評の前提とした事実の主要なところが真実と証明されれば違法性がないとされ、真実の証明ができなくても真実であると信じたことに相当の理由があれば故意過失がないとされます。

 

名誉回復措置の請求

名誉毀損の場合は、損害賠償の他に、名誉回復措置の請求もできます。
具体的には謝罪や訂正・取消の広告などです。

名誉毀損が悪質で違法性が強い場合などで、名誉回復のために謝罪広告などの措置が相当な場合に認められます。

損害賠償が認められても、名誉回復措置の命令まで裁判所で認められるのは少ないです。

不倫の場合は、メディアで公表された等の場合で公表された事実が虚偽だった場合など限られた場合でなければ名誉回復措置を求める実益はなさそうです。そのような場合でないと、不倫の事実を蒸し返すことになりかねないからです。

 

名誉毀損の差止訴訟

名誉毀損の状態が続いている場合は、名誉毀損を止めるように差止請求することも可能です。
また、名誉毀損されるおそれがある場合は、事前に差止請求することも可能です。

差止を求める場合は、訴訟で差止を申し立てて判決まで時間がかかるので、仮処分(保全)の申し立てをして訴訟より早く裁判所の決定を出してもらう方法を取ることになると考えます。