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コラム

調査会社の写真撮影は肖像権侵害になるか

不貞行為の争いで、調査会社(探偵、興信所)が対象者を尾行して、第三者との食事やホテルや住宅の出入りの写真を撮影した報告書が証拠として提出されることがあります。
そのような写真撮影は、写真に写っている対象者や第三者の肖像権やプライバシー権を侵害して、不法行為とならないのかという問題があります。

 

原告の妻が依頼した調査会社を被告として、被告の調査員が原告を尾行等しホテル内の客室階において客室に入る原告を撮影した行為が違法となるか争われた事案があります(東京地裁平成29年12月20日判決)。被告に慰謝料300万円の損害賠償請求をしたこの訴訟は、原告の全部敗訴になっています。

結論として、私としては、この判決の検討過程には不足があり、慰謝料を認めなかったのには疑問があります。

 

この東京地裁判決は、調査員の撮影行為の違法性について、
「人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」(最高裁平成17年10月11日第一小法廷判決)と最高裁判決を指摘して、
「不貞行為に係る撮影行為に当たっても、撮影場所、撮影目的、撮影態様、撮影の必要性等を総合考慮し、かつ、当該行為の根拠となる法令がある場合には同法令も踏まえ、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを検討する」としました。
その上で、探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)第2条1項の「探偵業務」の定義を指摘して、探偵業法所定の調査や資料収集に必要な行為は許容されているとしました

 

 

(定義)
第二条 この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。

 

 

さらに、東京地裁判決は、「原告の不貞行為を示す客観的な資料として、原告であることを特定でき、かつ、原告が不貞行為をしていることを推認させるような場面を撮影する必要性は高い」としました。
そして、「その撮影場所・態様は、被告の調査員が、ホテルのロビーや客室階まで原告を尾行、張り込みして、上記場面を撮影するというものであり、探偵業法所定の探偵業務の範囲に含まれているし、第三者が訪れるホテルのロビーや客室階という場所での撮影行為であって、ホテルや原告の不貞行為と関係があると認められない第三者の承諾が得られない可能性があるとしても、原告や不貞の相手方と目される第三者との関係において、著しく不相当であるとまでいうことはできない。」として、
「被告の調査員による原告の撮影行為は、原告の人格的利益を侵害するものであるにせよ、社会生活上受忍の限度を超えるものであるとはいえず、違法性はない」とまとめて、調査員の行為の違法性を否定して、原告の請求を棄却しました。
私としては、この東京地裁判決には、探偵業法第6条の規定についての考慮が無かったと考えます。訴訟の中で、特に原告から主張が無かったのかもしれません。

 

 

(探偵業務の実施の原則)
第六条 探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という。)は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。 

 

 

第6条で明記されているとおり、探偵業務だからといって、法令によって禁止・制限されている行為はできませんし、個人の権利利益を侵害する行為をすることが許されているわけではないです。

 

原告が第三者の女性とホテルに入室する状況を撮影することは、原告や第三者の生活の平穏を害する行為、プライバシー権や肖像権など人格的権利を侵害する行為といえますから、探偵業法第6条に違反する行為となるといえます。

 

 

また、撮影のあったホテルの客室階は、通常はホテルはその階の部屋の宿泊客以外の客の立ち入りは禁止しているはずです。調査員が、当該ホテルの当該客室階の部屋を取っていたという例外的な事情でも無ければ、撮影の場所や態様は立ち入りする権原の無い客室階に行われたものとして相当なものとはいえなかったと私は考えます。

 

したがって、私としては、調査員の撮影行為を違法としなかった東京地裁判決には疑問があります。
調査会社に撮影されて調査会社を相手に慰謝料請求をする方は、探偵業法第6条の点などを十分に主張して、裁判所の判断を得てもらいたいと考えます。